『なかった ーー真実の歴史学』第五号 へ

序言 中言 末言  古田武彦   2008年 6月30日

序 言   古田武彦


 コップの中の論争がある。人はこれを教科書論争と呼ぶ。『新しい歴史教科書』なるものが出た。教育界をひっくりかえすほどの騒ぎだった。
 わたしはじーつと見つめた。一つひとつ見比べてみた。ちがいはなかった。どちらも「大和朝廷至上主義」の双生児。日本の歴史の果実を、天皇樹の枝々に“ぶらさげる” ーーそれが歴史だった。
 「九州年号」などに真面目に対面する気、一切なし。おそろい、知らん顔の半兵衛だった。


中 言


 敗戦の受諾は「国体の護持」と引き換えだった、周知のように。連合国は表面は「無条件降伏」と称しながら、実際は「護持」を認めた。アメリカお得意の「司法取り引き」めいた、やり口だったのだ。
 人は知らない。「取り引き」されたのは、明治以来の「天皇家至上主義」の教科書だった。これに反する立場は「教科書検定」の刃でザックリと切り捨てられた。「教科書検定」など、アメリカにはない。だが、日本の国民のような「十二歳の子供」には必要。これが彼等の口実だった。「日出ずる処の天子」(隋書イ妥*たい国伝)の居場所をしめす「阿蘇山有り」という肝心の一言は、除かれたまま。戦前も、戦後も、変わりはない。
 彼等に必要だったのは、「占領上の利害」だけだ。決して悠久なる歴史の真実などではなかったのである。


 末 言


 歴史なき国は歴史の女神の復讐を知らぬ。その破壊力を知らないのである。彼等は「誇り」のいっぱいつまった圧力鍋に無理矢理ふたをしようとする。そして結局ふたがあき、自分たちは過去へはね飛ばされてしまう。
 地球に覇(は)を唱える国は次々死んでいっても、ついに人間の真実は死ぬことがない。

 

___予告訂正 二〇〇八年六月刊行___________________
古田武彦・竹田侑子編
東日流[内・外]三郡誌
ついに出現、幻の寛政原本
 東日流外三郡誌を一貫して「真書である」と支持してきた古田武彦氏による詳細な解説とともに、新たに発見された『東日流外三郡誌』と『東日流内三郡誌』の寛政原本を写真撮影し、貴重な歴史的資料として世に問う。笠谷和比古氏による鑑定書掲載。

A5判・三二〇頁価格 五〇〇〇円(税別)
ISBN978-4-902950-77-9 C3021

株式会社オンブック(電話:〇三 ー 三七一九 ー 八六一七)


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