この度は「九州年号特集」を発行し、世に問うことになった。これこそ古田説の真髄であろう。
古田氏が古代史界に登場して早、十有余年の歳月は流れる。その間の学説を時代順に挙げれば、「倭人多元説の否定」「盗まれた神話」「『邪馬台国』はなかった」「邪馬一国の考古学」「倭の五王は九州王朝」「関東に大王あり」「遣隋使はなかった」等々。
これらは古代史界の「定説」を揺がすに充分な論証であるにも拘らず、学界からは殆んど反論、肯定論もなく黙殺か、容認か、得体の知れない態度が続いている。
しかし古田説は市民の心にじわじわと浸透しているのである。その証拠に、五年来「古田武彦を囲む会」が組織され、九州の博多・小倉に続いて、信州松本に「囲む会」が誕生、東京は大阪より以前に、市民の講演会が年二回開催され、最近「古田武彦と古代史を研究する会」が発足した。
このことは一体、何を示唆しているのか。真実を求める眼は、衆目がその正鵠をうがつということか。
考えるに、象牙の塔は近畿天皇家一元史観のフィルターを外して、おおらかに史実を振返る余裕がないのかもしれない。
しかし、邪馬「台」国の分野では、『三角縁神獣鏡は日本産』とした、中国の王仲殊論文が発表され、始めて学界は大いに揺れるところとなった。
浮世絵がフランス画壇に見出され、フェノロサが日本美術を発見し、黒沢映画がカンヌによって位置づけられたと同じように古田説の多くは将来、国際的視野に立って始めて、その真価を理解される。その時が必ずやってくることを、今、確信するものである。
古田武彦を囲む会会長 中谷義夫
これは雑誌『市民の古代』の公開です。史料批判は、『市民の古代』各号と引用文献を確認してお願いいたします。
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