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市民の古代 第10集 1988年 市民の古代研究会編
10周年を期して

渇望「古田学派」

東北・市民古代史の会 鎌田武志

 昨年秋より、当青森市において「古田史学による源氏物語講読」という内容で市民教養講座を担当しております。昼夜あわせて七十数名ですが、当市としては一定の影響力を持つ数であろうと思います。すぐれた現代語訳がたくさん出版されている時代ですので、「定説」による解釈でしたら私の出る幕はありません。「一切の先入観を排し、まず原文全体の表記のルールを見出す。次にそのルールによって解読する」という古田史学の根本的態度を源氏物語に適用する時、源氏物語は開拓すべきすばらしく広大な未知の荒野として我々の前に横たわっているのです。ようやく帚木を読み終える所で、これから十三年はかかるだろうと思います。源氏物語も古代史と同じく因循姑息な解釈が罷り通って学的発展を妨げているのです。受講生と共に「理性に照らして納得のいく」解釈を得た時、古田史学のすばらしさに感動するのです。「三部作」という妙な説も、「源氏物語に学んで現実の歴史が動いた」という逆転した発想も「子供にでも解るやさしい論理」の前に是正される日が来ると思います。
 一見、奇異に感ずる方もおられると思いますが、源氏物語に限らず、あらゆる分野に「古田史学」が求められているのではないかと思うのです。国文学、教育学、古代史、他の時代の歴史、言語、地理、考古学、郷土史等々。古田先生の「親鸞」はどう考えても「古代史」の枠におさまりきれないでしょう。全てを網羅した原点に位置するものとして「古田史学」が存在する ーー私はこう考えています。その意味においては「市民古代史の会」も古田史学の一分野を担う名称に過ぎないのではないかと思います。「親鸞研究会」「今昔物語講読」「戦国武将探究」「教育の理念」「市民の地理学」「考古学」そのようなサークル、研究団体を統括した頂点に古田史学を置いてみたい。それはもはや「古田史学」ではなく「古田学派」と呼び得るものであろうと思っています。
 そしてその推進母体として「市民の古代研究会」から「古代」の名称が取り払われ発展的に解消した姿になっているのではないかと夢想しております。逆説めいた言い草になりましたが、現代的な潮流の先端に立つ「市民の古代研究会」の使命としてこの事を渇望するのです。十周年を祝すると共に、、更に十年後の私の夢を満たしてくれるものとして「市民の古代」の発展と活躍を心から念願いたします。


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