田島芳郎
『市民の古代』記念特集号発刊おめでとうございます。
古田武彦氏の研究が深化・発展するのと軌を一にするように、市民の古代研究会もこの十年の間、発展につぐ発展を遂げてこられました。曇りのない目で古代史を学ぼうとするアマチュアの真摯な情熱が、今まさにわが国の歴史学を揺がそうとしています。驚くべきことです。
藤田事務局長をはじめ、市民の古代研究会幹事の方々の疲れを知らぬ活動には、いつも敬服させられました。『市民の古代』に寄せられた会員諸氏の珠玉の論丈は、常に私の目を開かせて下さいます。『市民の古代』の十年は、日本古代史学界に、その研究のターニング・ポイントを示し続けた十年であったと言えましょう。今やいかに頑迷な大家として、表面はともかく、その内面においては『市民の古代』の成果を無視することはできまい、私にはそう思われます。
私自身はいたずらに馬齢を重ねたのみで、皆様と共に古代史学の発展に寄与することはできませんでしたが、東京で古田氏の学説を広めたいとする人達に混じって、講演会を準備したりしてきました。確かに流れは変わりつつあると感じます。けれども、現状をもってよしとするわけにはいきません。巷にあふれる歴史書の、なんと理不尽なものの多いことでしょうか。
漕ぎ出す舟の勢いが強ければ、波もまた高まります。『市民の古代』の戦いは、これからますます熱を帯び、激しくなっていくものと思います。市民の古代研究会の皆様の力強い研究の成果で、歴史学の野が埋め尽くされる日が来ることを願ってやみません。