『古代に真実を求めて』第七集


巻頭言

会員論集・第七集発刊に当たって

古田史学の会代表 水野孝夫

 「古田史学の会」は一九九四年に発足した会です。十年目を迎えました。会の目的は会則第二条に記載されています。
 「本会は、古田武彦氏の研究活動を支援し、旧来の一元通念を否定した氏の多元史観に基づいて歴史研究を行い、もって古田史学の継承と発展、顕彰、ならびに会員相互の親睦をはかることを目的とする」。

 定期的な情報として発行する、会員論集「古代に真実を求めて」はここに第七集を迎え、会員用のニュース紙として発行する、「古田史学会報」(年六回)は、こちらも五九号を発行しました。古田武彦氏の新しい研究や講演内容もあれば、それに刺激された会員の研究成果などが、絶えず掲載されています。これらの情報の一部はインターネットのホームページ「新・古代学の扉」(アドレスは巻末参照)にも発表されています。古田武彦氏の言説に関心のある方々のご利用をお待ちします。

 古田武彦氏は昭和四十七年の著書『「邪馬台国」はなかった』以来、定説を否定する驚くべき古代史像を世間に提供してこられました。三国志のすべての写本に「邪馬臺国」と書いたものはなく、「邪馬壹(または一)国」であり、後代の文献に「邪馬臺国」とあるからといって、「壹は臺の誤り」とする根拠にはならないとする氏の説は、これを当然とする、われわれの会の原点であります。この目で見てゆくと、後代の学者の考えで原典の文字を勝手に変えた例が歴史資料に多いことに驚かされます。  古田武彦氏は二〇〇三年に喜寿を迎えられ、これを記念して「古田史学の会」では会員の投稿によって「古田史学いろは歌留多」を作成し、古田氏に贈呈致しました。その内容については本集にも紹介しています。二〇〇四年六月六日には「古田史学の会」十周年記念大会を開催予定です。

 二〇〇三年における、日本古代史・考古学の世界での最大のできごとは、国立歴史民俗博物館の研究チームによる「弥生文化の開始期が通説よりも約五百年さかのぼり、紀元前九百年ごろになる」という発表でありましょう。用いられたAMS法という測定法は、土器に付着した煮焦げや吹きこぼれ、土器に入れられた内容物からの炭化物を直接測定するので、その原理からして、その土器が使用された年代に近いと考えられ、共伴する他の遺物(たとえば金属器)の使用推定年代と整合しないとしても、その説明は別に考え出すべきであり、この発表が及ぼす影響は、非常に大きいと考えられ、期待がもてるものであります。

 会員論集は会員のどなたにも、定説にとらわれることなく「真実」を探求した成果を発表する場であります。今後とも活発なご投稿をお願い致します。


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『古代に真実を求めて』第七集

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制作 古田史学の会
著作  古田武彦