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三角縁神獣鏡の史料批判 --三角縁人獣鏡論 古田武彦
方格規矩式鏡の形式についての一考察 鈕孔の向きに注目して 谷本茂
『新・古代学』古田武彦とともに 第5集 2001年 新泉社
2000 年 8 月 古田武彦 藤田友治 谷本茂
安満宮山古墳(大阪府高槻市)出土の「青龍三年」銘のある方格規矩四神鏡( 2号鏡)と、それと同型鏡とみなされている大田南5号墳(京都府)出土の銅鏡について、実見調査の機会を得たので、主に鈕に関して概要を報告する。
二種の銅鏡は、寸法、銘文、文様などの特徴が殆ど同じであり、一応「同型鏡」とみなしても大きな問違いではないであろう。ただし、銘文の字体や文様の仕上げ加工の仕方には微妙な差も観察されるので、完全な同型鏡かどうかは今後の詳細な検討を経て確定すべきである。形状の著しい相違は鈕孔の位置(方向)であり、銘文の配置に対して各々約 90 度異なる向きに鈕孔があいている。
鏡面直径 : 174mm
銘文 : (39文字 右回り)
●青龍三年顔氏作竟成文章左龍右虎辟不詳朱爵玄武順陰陽八子九孫治中央壽如金石宜*侯*王
侯*は、侯の別字。JIS第4水準ユニコード77E6
宜*は、宜の別字。JIS第3水準ユニコード519D
安満宮山古墳出土鏡の「龍」第一文字は旁が「大」に近い異体字。第二文字の旁は「尤」に近い異体字である。
大田南5号墳出土鏡の「龍」第一文字は旁が「犬」あるいは「尤」に近い異体字。第二文字は『尤」あるいは「尤」に近い異体字である。
鈕の直径 : 約 30 mm
鈕座の外形 : 約 36 mm
鈕座の内径 : 約 34.5 mm
鈕の高さ : 鈕座面より鈕頂まで約 8mm、鈕座面の高さは約 1mm。
鈕孔 : 各々の鈕孔の方向は約 90 度異なる。
安満宮山古墳出土鏡の鈕孔は銘文の「作竟」側(A とする)と「陰陽」側(B とする)とに向いて開けられている。大田南5号墳出土鏡は「右虎」側(C とする)と「如金」側(D とする)とに向いて開けられている。どの孔も長方形あるいは逆台形に近い断面であるが、鈕の表面の仕上りに比べて開孔部分の縁処理は雑である。
調査概要3
方格規矩式鏡の形式についての一考察 鈕孔の向きに注目して 谷本茂