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藤田友治氏作成『東日流外三郡誌』「人の上に人を造らず、」一覧へ
『東日流外三郡誌』(昭和五八年一二月二五日発行)
15,奥州匿史抄下巻 秋田孝季 寛政五(一七九三)年 一巻 386〜87
蝦夷ぞ、神代のいにしいより世浴を当らず。
暦史に匿し、征夷ののみ事遺れるいまはしさ、誠に以て奥州は日本国化外の地とぞまヽ子の如く。渡島の蝦夷は今尚以て豊地を追はる末胤なり。
天に一ツの日輪あり。
その光明は平等にして、日本八州いづこにも照さゞ処なし。
人の種別、神の創れる処為にして、吾等人間をして是をいみきらう処為に非らざるなり。国を司るもの、それは人の善を人の為に尽すべき者を、君主と迎き奉こそよけれ。
親は子案じ育て、子は親にその思報に従ふが如く、国の乱る源は国を司る君主に依りて兆なり。
強者、弱とぞ戦の場に通用せども、泰平にありては泰平を護るが故の治世、亦安しきことなし。戦に当る者は、決断武勇を以てするが如く。泰平に当りても亦、その意に等しく、戦を以て意を私にせる者は国を貧しくせる残猿き行為なりき。
奥州の暦史(ママ)は、故地を追はるる、先住民の悲史にして、その流血は路草の如く忘却されて、侵者ののみ遺れしは、日本に遺れる暦史なり。
奥州は、日本八州の権者に追れたる者の故地にして、その優れたる歴史は聖師ありて遺しとも、是を奪消しけるのみにして、今尚以て続きたるは事実なり。
民の美風は日本諸国同じからず。土産の物その国をして異りぬ。依て、住む人とて亦然なり。
亦、春夏秋冬の候とて異れば、暮しの備亦異りぬ。空を渡る渡り鳥、その候を求めて旅せるが、人はその地に生まれて郷となし、為めにその風土に習ふなり。是を侵すものは、歴史に遺れるも、黄泉に浮ばれざる輩なり。
茲に、津軽の国末より奥州の故霊に菩提を念じつつ。
寛政五年 秋田孝季
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