天は人の上に人を造らず・・・と云へり 総覧へ
藤田友治氏作成『東日流外三郡誌』「人の上に人を造らず、」総覧
『総輯東日流六郡誌』津軽書房版(昭和六二年七月二〇日発行)
日之本将軍安倍安国状 寛政五(一七九三)年八月
人世に生れ、親に育まれ、生々少(わづ)かに五十年。さりながら、天地水の化に身命(しんめう)を得、また保つとも、必身つねにして安からず、世の乱れ、人の殺生は、その国に住みて満足ならず、人の安住を侵して、人を生口(せいこう)に制(おさ)へ、おのが権を満たす。
もとより、天は人をして上下に造りしなく、光明は無辺に平等なれば、いかでやおのれのみ、もつて満足に当らんや。よつて、わが荒覇吐の血累は、主衆にして一人とも賎下に制ふる験しなし。主(あるじ)なりとて、生命の保つこと久遠(くをん)ならず、従(じゅう)なければ王ならず。民一人として無用なるはなかりき。よつて、わが一族の血には、人の上に人を造らず、人の下に人を造ることなかりき。
光陰は移ること速く、心覚へなる幼心、五十歳を尽してかへりみしや、昨日の如し。よつて、ここに、荒覇吐の子々孫々に、この状を遺し置くものなり。
一族をして、争ふなかれ、また、一族をして、暮しの貧しさを招くべからず。先祖は一にして二祖なけると心し、一族の内に仇すべからず。一片の糧をもあひ分ち、睦(むつみ)を失ふべからず。常にしてあひ和し、国運を護るべし。
そもそも、一族の血は、われ独り異(ことな)るぞと、反心に及ぶべからず、心して安心立命の悟りに達すべし。
寛政五年八月 古書写 秋田孝季
『真実の東北王朝』(第六章 『東日流外三郡誌』を問う)「神は人の上に人を造らず・・・」へ
藤田友治氏作成『東日流外三郡誌』「人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」総覧