和田家文書〔「東日流外三郡誌」など〕 訴訟の最終的決着について(『新古代学』第三集)へ
裁判関係は下にあります

古田史学会報
1997年 2月26日 No.18
野村孝彦氏の和田氏控訴審に関するその後の報告

仙台高裁、「盗作説」を退ける

青森県藤崎町 藤本光幸

  古田史学会報十七号の中に“「和田家文書」偽書論者に対する反論”として、前回私は「『東日流外三郡誌』をはじめとする「和田家文書」を和田喜八郎さんにより戦後偽作されたものであるとし、現在まだ和田さんによって創作されつつあるとする安本美典、野村孝彦ら偽書論者一派は、現在、和田喜八郎さんを仙台高裁に控訴して居ります。」と書きました。
 これに対して一月二十九日午後九時三十分頃に安本美典氏から私の所に次の様な電話がありました。「古田史学会報十七号を見ました。私は(安本氏)野村と一緒ではありません。むしろ野村が控訴するのに対して反対して居るのです。古田史学会報十七号は事実無根です。もっとよく調べてから発表して下さい」と。
 この電話で安本氏自らが申して居る様に、安本氏も憶測による個人に対する誹謗中傷ではなしに公平な目でよく調べてから「和田家文書」を批評するのが学問の大道ではないでしょうか。

 また野村陳述書に「ここにいう勾玉や剣は偽物である。」とありますが、これに対しても私は反論しました。勾玉の大きさはまだ計測して居りませんが、日本国内で民間に存在するものでは最大のものだと思います。剣は在銘にあります様に天国(あまくに)の剣で、大正二年か三年の弘前新聞と考えられる新聞紙上に次の様に掲載されて居ります。「国宝級山形県から五人参観に来青」との見出しの下に「本社主催“刀剣展覧会”第二日目-十九日の日曜日は果然市内の呼び物となって 開場以来入場者引きも切らず流石時局下に恥じぬ催しを現出したこの日天国在銘の二尺三寸五分の業物(昨年秋本鑑定の結果 国宝級の物と折紙をつけられた)古備前包平(本県下に一本)が和田末吉氏から出品」と書かれています。
 所で、当初この記事は「来青」とありますので、東奥日報に掲載されたものかと思って東奥日報社に問い合わせました所、次の様な回答がありました。

「本社調査部が調べたところ、結論として本紙記事ではないことが分かりました。理由は

1. 大正二年ごろの本紙紙面は十三字詰めの体裁をとっていない

2. 見出しのスタイルからみて他紙と思われる--などです。」

 以上の事から東奥日報掲載でない事がわかり、和田さんの弘前新聞ではないかとの言で、当時の弘前新聞を弘前図書館で調査しましたが、大正二年十月十九日(日)・大正三年四月十九(日)・七月十九日(日)・大正四年九月十九(日)・十二月十九日(日)の弘前新聞には同記事の記載がありませんでした。大正二年一月十九(日)の分は大正二年一月二月の弘前新聞そのものが紛失してなくなって居りますので弘前図書館では調べようがありませんでした。
  しかし、弘前新聞社は戦前に時の国の政策によって東奥日報社と合併させられて居りますので、目下東奥日報社と県立図書館で調査中です。もしもこれらが判明すれば天国の剣の事だけでなしに、和田末吉氏の実在証明にもなる訳です。
 以上が和田喜八郎氏に対する仙台控訴審のその後の状況ですが、安本氏から電話があった翌日一月三十日には控訴審の判決があり、和田喜八郎氏が実質上「勝訴」しました。これにつきましては別途詳しい報告があるものと思います。

<編集部注>藤本氏から勾玉や剣の写真も送られてきたが、紙面の都合で割愛した。
 また、安本氏からの電話の内容から、はからずも氏がこの裁判に深く関与されていた様子がうかがえ、偽作キャンペーンの構造を知る上でも興味深い。高裁判決は、写真の無断使用を除いては、野村氏の文章からの盗作という控訴人の主張をことごとく退けた


裁判関係の報告は以下の通り

報告 半田「鑑定書」に対する批判 古田武彦

報告 報告書 和田家文書をめぐる裁判経過 古田武彦

報告 陳述書 和田家文書をめぐる裁判経過 (齋藤陳述書〔甲第二八四号証〕)古田武彦

報告 陳述書 和田家文書をめぐる裁判経過 (野村孝彦氏陳述書[甲第二八三号証])古賀達也

報告 陳述書 和田家文書をめぐる裁判経過 (野村孝彦氏側斎藤隆一氏報告書【甲第二八五号証】)古賀達也


報告 平成七年二月二一日 青森地方裁判所判決 付 別紙(九) (野村孝彦氏が主張する「邪馬台城」剽窃一覧

報告 平成九年一月三〇日 仙台高等裁判所判決

報告 平成九年一〇月一四日 最高裁判所判決 付 上告趣意書(平成九年(オ)第一一四〇号 上告人 野村孝彦)

 

付録 資料和田家文書1 邪馬台城 総覧


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