2009年12月7日

古田史学会報

95号

1,時の止まった歴史学
 岩波書店に告ぐ
 古田武彦

2,九州年号の改元
 (前編)
 正木 裕

3,四人の倭建
 西井健一郎

4,彩神(カリスマ)
 梔子(くちなし)
  深津栄美

5,エクアドル
「文化の家博物館」
館報
 大下隆司

6,伊倉 十一
天子宮は誰を祀るか
  古川清久

 

古田史学会報一覧


「バルディビアの旅」その後 大下隆司(『古田史学会報』88号)

エクアドル「文化の家博物館」館報

豊中市 大下隆司

 九州弥生時代のものとそっくりの甕棺が展示されているグアヤキル市の「文化の家博物館」の創始者カルロス・セバージョ氏の生誕百年を記念して、館報特別号『歴史と考古学ノート2009』が発行されました。館長のアントニエタ・フネスさんは、古田先生一行が二〇〇七年二月に訪問したとき、案内して下さった方で、その後もエクアドルの黒曜石(『なかった・第四号』に写真掲載)や現地での発掘資料などを送ってくださり、太平洋伝播説に非常に好意的な立場にたたれている方です。今回の館報についても、メガーズ博士や古田先生、古田史学訪問団一行、そして九州の甕棺の写真が掲載されています。

エクアドル「文化の家博物館」情報

 館報はA4サイズ百九十八頁で、エクアドル各地での考古学発掘研究の報告、近代史の分野ではエクアドルで黄熱病の研究を行い、多くの人たちの命を救った野口英世の功績を称えた論文などが掲載れています。また博物館の活動記録の中で「太平洋伝播説」に関係するものとしては次のことが書かれています。
 (1). バルディビアを発掘したエミリオ・エストラダ氏特別室の改装。
 (2). トリタ遺跡などから出土した黄金製品の展示室の改装。(甕棺が出土したコロンビア国境にあるトリタ地区は黄金文化として有名です)
 (3). 二OO六年にバルディビア発掘五十周年記念行事に参加したメガーズ博士の訪問。
 (4). 二OO七年二月の古田武彦氏を代表とする古田史学一行の訪問。「彼らは、日本でも同じ形状の甕棺に死者を埋葬していたとしてエクアドルで出土する甕棺に非常に興味を持った。また黒曜石の鏡にも興味を示した。当然彼らの関心はバルディビア文化にもあった。」
 (5). 二OO八年七月のバルディビアに関心をもつ日本の歴史研究家グループの訪問。
 この本は、十年振りに一時帰国した日暮邦行さん(バルサの筏でエクアドルから日本への「古代の太平洋の航海」を証明しようとしている)がフネス館長から古田先生あての贈呈として届けてくれました。ちょうど八王子セミナーの開かれているときで、日暮さんはセミナー二日目の午後に来て、彼のプロジェクトの近況を報告してくれました。彼の筏は残念ながら試験航海中に破損したため、現在は現地で「バルサの小さな船で昔ながらの漁を続けている漁民の保護」などエクアドルの自然と環境保護のNGOを立ち上げ活動を行っており、その間、筏プロジェクトの再起を計っています。セミナーには「東京古田会」藤沢代表、「多元」和田事務局長などエクアドル訪問団のメンバーも多数参加されていて、再会を喜びあいました。
 古代のエクアドルと日本の類似については、バルディビアの縄文土器、弥生の甕棺だけでなく、現地で能の翁面に似た土面が出土しており、古田先生が指摘されている中間地点としての南九州の仮面など、これからもまだまだ多くのことが出てくると思います。日暮さんや博物館のフネス館長など現地の方と情報の交換を行い、「太平洋伝播説」のさらなる発展に繋げたいと思っています。


 これは会報の公開です。史料批判は、『新・古代学』(新泉社)・『古代に真実を求めて』(明石書店)が適当です。

新古代学の扉 インターネット事務局 E-mailはここから

古田史学会報95号

古田史学会報一覧

ホームページへ


Created & Maintaince by" Yukio Yokota"