書評
倭人とはなにか
漢字から読み解く日本人の源流
木津市 竹村順弘
当会会員の出野正・張莉著になる「倭人とはなにか」を紹介する。
中国の正史、班固、班昭らによって編纂された「漢書」地理志に「楽浪海中有倭人」と言う語句が出る。「有」と言う文字が使われている。その後の「三国志」魏志倭人伝条では「倭人在帶方東南大海之中」と、「在」の文字が使われている。以後、後漢書、晋書、宋書、隋書、旧唐書もすべて「在」が使われ、「有」は使われていない。日本語に訳せばどちらも「ある」になるが、中国語では未知のものには「有」を既知のものには「在」が使われる。この用法だと「倭人は中国人にとって初めて知った」となると漢書が初出となる。
ところが、王充が著した「論衡」に「(周の)成王時、越裳獻雉、倭人貢鬯」とある。また中国安徽省亳州市の曹磚に「有倭人以時盟不」という文字がある。これらの事実より著者は、南中国に住む倭人が北上して、遼東半島、朝鮮半島、日本列島に移り住んだとし、南下した一部はシーサンパンナ(西双版納)に住むハニ族(哈尼族)で古くからの自称が「倭尼」と言う。
(明石書店、税別2600円)
これは会報の公開です。史料批判は『古代に真実を求めて』(明石書店)が適当です。
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