年頭のご挨拶 水野孝夫,書評 松本郁子著 『太田覚眠と日露交流』,事務局便り
松本深志の志に触れる旅 輝くすべを求めて 松本郁子
年頭のご挨拶
三人寄れば文殊の知恵
古田史学の会代表 水野孝夫
あけましておめでとうございます。
会員の皆様も新しい決意の元旦を迎えられたことと存じます。わたしが頂いた年賀状にも「研究を加速したい」との決意を書かれた方がありました。
古田武彦先生は昨年は、エクアドル訪問や和田家文書「寛政原本」発見でお忙しかったのですが、ほかにも親鸞佐渡流罪、金印、その他つぎつぎに研究を進められています。現在は「大化の改新」が中心テーマのご様子です。
当面は「最近、新著が出ていない」との声にこたえて、著作に注力のご予定です。
昨春の「ご挨拶」欄に「三人寄れば文殊の知恵」と書いたのですが、先生の説や、他の会員のアイデアに刺激された、会員の研究が次第に充実してきているのを、ますます感じます。
わたしはいま「八代海のことである淡海という言葉が、淡水湖の近江=琵琶湖と混同された」問題に夢中です。
今後とも会の活動にご協力賜りますよう、お願い申し上げます。
書評
松本郁子著
『太田覚眠と日露交流─ロシアに道を求めた仏教者』
この年末年始は、松本郁子著『太田覚眠と日露交流ーーロシアに道を求めた仏教者』(ミネルヴァ書房・六千円+税)を著者からいただき、読みました。この本は太田覚眠研究の名著というにとどまらず、アウグスト・ベエク、村岡典嗣、古田武彦と続くフィロロギーの学問を継承した一冊です。古田史学、とりわけ日本思想史の分野に関心を持つ者には必読の一冊です。
また、日露戦争開戦時に国家から見捨てられシベリア奥地に取り残された邦人八百人(その多くは「醜業婦」)をシベリアを横断し地球を西回りで救出するという快挙を成し遂げた太田覚眠とその偉業が忘れ去られようとしている今日の日本において、読まれるべき本です。
ロシア語に堪能な若き著者は、日本国内は当然のこととして、ロシアまで史料探索を行っており、その結論だけではなく、学問の方法が見事です。しかも、その文章力により、読みやすく、面白く感動的です。
著者は、これからもロシアへ赴き調査を続けると言われており、早くも続編の刊行が楽しみです。新年最初の読書に相応しい本でした。(古賀達也)
事務局便り
▼本号掲載の冨川稿は、関西例会で発表され好評だったもので、古田先生の研究に触発され、発見されたテーマです。
▼松本郁子さんからは古田先生の松本深志時代に触れた貴重な原稿が寄せられました。
▼前号にて、古田先生が三年間は講演を控えられるとお知らせしましたが、正確には著書執筆のため、既に約束済みなど特段の事情が無い限り、今後は講演をされないということでした。謹んで訂正します。
▼講演が無いことは残念ですが、新たな著書刊行を楽しみにしたいと思います。@koga
これは会報の公開です。史料批判は、『新・古代学』(新泉社)・『古代に真実を求めて』(明石書店)が適当です。
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