『古田史学いろは歌留多』(木村賢司氏企画・製本)へ 事務局便り
菅政友と『琉球漫録』 那覇市 仲村致彦(会報66号)
「古田史学・いろは歌留多」が沖縄新報(二〇〇四・十・二二)で紹介されました。
『古田史学いろは歌留多』
日本史の構造革命に迫る
仲村致彦 ((週)沖縄新報・編集顧問)
手作りでいかにもカネが掛かっていないーという感じの本ながら、中身には「巨万」の富が詰まっている壹冊(一冊の本)をご紹介しよう。
『古田史学いろは歌留多』である。古田史学の会編・2004年1月1日刊。京都に事務局のある古田史学の会が、その古田史学の真髄を分かり易く、いろはかるたに作成し、全48歌について短い解説を付した冊子だ。表紙に「この壼冊で古田史学とは何か、古田史学の真髄が解る」とうたわれている。
「古田史学の会は古田武彦氏の実証的な歴史研究に刺激され、氏の方法論と多元史観に基づいて日本の古代史を研究したいと考える人々の会」であるーー と、水野孝夫古田史学の会代表が発刊にあたって述べている。古田武彦氏の古代史は「従来の常識に無かった『邪馬壹国』論、『九州王朝』論をはじめ、記紀論、風土記や万葉集の解釈に至るまで多岐にわたって」いるが、古田氏が喜寿を迎えたお祝いに、この「かるた」を手作りで作成したという。
会員から歌を募集したところ、さすが古田氏の学問を慕い、共に勉学に励む多数の会員から、古田史学のエッセンズが詰まった歌が寄せられた。厳しい選考により48歌が決定された訳であるが、短いながらも濃密な解説が付き、楽しみながら日本史の「真実」に迫る貴重な壹(一)冊になっている。
この本を手にする読者は、これまでに培われてきた常識(定説の如きもの)に、メガトン級の一撃を加えられ、夢でも見ているのではないかーー と、一瞬、呆然とするに違いない。
試みに「お」の部を見てみよう。『「王朝」が日本列島あちこちに』とある。解説にはつぎのようにある。「古田史学の基本の中に、文献と出土品の整合化というものも含まれる。古田武彦氏はこれを『シュリーマンの法則』と名づけた。神話にある『トロイの遺跡』の実在を信じ、遂にヒッサリクの丘でこれを発見したシュリーマンの喜びにちなんだものである。古田武彦氏はまず『九州王朝』を次に『出雲王朝』を発見した。また『関東王朝』や『東北王朝』も見い出した。『大和王朝』を含め、各地に王朝があったと考えるのが自然である。最初から『天皇家』しか王朝はなかったとする皇国史観は、伝統のテシノロジーに侵されている」日本は悠遠の古の昔々から天皇家のみ、大和朝廷のみと教えられて育った者に取って。?ととても容け入れられないだろうが、問題はこの「?」が大切なのだ。「?」が「なるほど」そういう見方もあるかーー と、読者のその脳髄に科学の光が射し掛けた時、読者は古田史学の門に招かれることになる。その門の中は沖縄の米軍基地のゲートの中のように、秘密も威嚇もなく、ひたすら真実に迫る科学的な方法論と検証の平和的な“刃”があるだけである。
私は、昭和57年8月に当時の琉球文教図書で古田先生の著『「邪馬台国」はなかった』を購入一読以来、古田史学の論理、実証力にとらわれ続けている。この『いろは歌留多』が、古田史学の門の様子をうかがう読者の契機になることを、心から祈りたい。
事務局便り
▼新潟中越地震の被災者の皆様にお見舞い申し上げます。古田史学の会では同地域被災会員の二〇〇五年度会費免除を決定しました。
▼古田先生のご病気も順調に回復にむかわれ何よりです。恒例の新年関西例会にて御講演いただけることになりました。今回は会員の西村・古賀も発表します。
▼本号冨川稿は明治における「九州年号・九州王朝」説の貴重な発見。相模原市から関西例会に参加されている冨川さんの研究成果です。
▼列島の代表者を大和朝廷とする今泉・飯田両氏の立場は、明治の研究者の限界か。これを突き破ったのが古田先生。
▼同じく姫路市から関西例会に参加の泥さんは会報初登場。これからの活躍が楽しみです。
▼松本郁子さんからは日本思想史学会発表内容をまとめた論文が寄せられました。太田覚眠研究の進展状況がよくわかる。
▼本会ホームページ「新・古代学の扉」アクセス十六万件を突破。今後は英語版の強化を図りたい。
▼皆様、良いお年をお迎え下さい
これは会報の公開です。史料批判は、『新・古代学』(新泉社)・『古代に真実を求めて』(明石書店)が適当です。
新古代学の扉 インターネット事務局 E-mailはここから。古田史学会報一覧へ
Created & Maintaince by" Yukio Yokota"