忘れられた真実(会報100号) 古田武彦
「高天原」の史料批判 古田武彦(会報114号)
新年賀詞交歓会「古田武彦講演」(要約) (文責 大下隆司)(会報103号)
二〇一一年度 久留米大学公開講座
九州王朝新発見の現在
要約 文責=大下隆司
一.阿蘇山問題・隋書イ妥国伝
◎有阿蘇山“其石無故火起”接天
○一般的に“その石は、故なくて火が起こり”と読まれているが、意味不明でおかしいと思っていた。
・天が起こしたものが“災”であり、人が起こしたものが“火”である。この文章の火は人が起こしたことを意味している。また「無故壇入」という熟語があるがこれは「無用の者猥に入ることを禁ず」で「無故」は禁止の意味。“接天”とは天に高くそびえていることである。
・これらから“其石”とは「阿蘇山の石で作った要害=神籠石山城」で、その中では祭事が行なわれていて、火を起こすことが禁じられている、という意味であることが分かった。
・神籠石は敵に対して作られた山城であると同時に大自然という敵に対して作られた霊域でもある。
(如意宝珠)
・宝珠とはイサナ(鯨)の目で作られた、?国の宝珠である。
(天災)
・瀬戸内海が出来た時のプロセスは縄文海進というきれいな言葉が使われて、だんだんと海面が上昇してきたような印象がもたれるが、実際、その時代は大地震、大津波の連続の時代だったのではないか。そして、その時人々は天に祈るしかなかったのではないかと考えています。
(高地性集落)
・第一の敵は大自然で、天災に対する恒久的な逃げ城として作られた。そして第二義的に敵の攻撃に対する防御の意味を持った。
・神籠石山城も高地性集落の延長として倭国が“自国民を守るために作った天に祈る場”であると同時に、“敵の攻撃を防ぐ山城”であった。
二.週刊新潮記事「卑弥呼の鏡」特鋳説
◎『全唐文』昔、魏ハ倭国ニ酬(はなむけ)スルニ、銅鏡ノ鉗文ヲ止メ、単于ニ遣・・。
○この文章は「倭国にとって禍々しい模様や銘文を刻むのを止めて、彼等の好むような銅鏡を作ってあげたと読める。いわば特鋳品を贈ったとあるわけです」と聖徳大学山口博名誉教授の意見が週刊新潮に掲載された。
・中国の鏡に縁起の悪い文は書かれていない。吉祥をあらわす言葉が書かれている。山口氏の「鉗文=禍々しい」というのは誤読である。
・『全唐文』にある「鉗」は造語で、倭人伝に書かれている“金印・紺地句文金”の“金と甘い”を合わせて作ったものです。倭人伝に書かれている贈り物の全体を示していると考えます。
(景初四年問題)
○山口氏はこの記事において「景初四年問題」にふれ、当時「景初四年」は当たり前のように使われていたとしている。
・此の問題は、今まで何回も説明してきたが、当時魏の臣下であった呉も魏の年号を使っていました。そして呉の年号には何故か一年ずれたものがあり、景初三年も景初四年としていたものと考えます。白村江の戦いを『旧唐書』が六六二年、『日本書紀』が六六三年としたのと同じです。
三.襲名の問題・『古事記』日子穂穂手見命
◎此令返石長比賣而。獨留木花之佐久夜毘賣。・・中略・・故是以至于今。天皇命等之御命不長也。
○日子穂穂手見命の寿命は五八十歳だがその後の天皇の寿命は短くなっている。その理由を『古事記』では邇邇芸命が石長比売を返したためとしている。
・寿命の大きな違いは、年齢を数える暦の相違です。これはそこに王朝の断絶があったことを示しています。日子穂穂手見命の王朝と神武以降の王朝は違った年暦を使っていたのです。『古事記』の編者はそれを知らなかった。
・日本で襲名の伝統はその後も歌舞伎・能などの伝統芸能に残り、庶民の間でも襲名が行なわれていました。昔、前原の手塚誠さんのお宅で同じ名前が続く手塚家の古い系図を見せてもらったことがあります。当時はそれほど気にかけなかったのですが、襲名の問題が新しく出てきましたので、もう一度見せていただけないか、ご遺族の方に頼んでいます。
四.『隋書・イ妥国伝』の竹島
◎裴清使於イ妥国渡百済行至竹島南望タン[身冉]羅国經都斯麻国・・又至竹斯国。
○「タン[身冉]羅國」は済州島であり、竹島は朝鮮半島南部の島とされている。
・隋書には百済伝・新羅伝・高句麗伝がありそれぞれの国のことはその伝に書かれている。この文はイ妥国伝にあるからイ妥国のことが書いてある。
・正しくは「タン[身冉]羅国」は下関を中心にした所にあり、竹島は現在問題とされている島根県の竹島です。そして隋書の竹島は現在の鬱陵島を意味すると考えています。
・韓国側の資料を読んでみたが、一番古いもので中世から始まっている。隋書は七世紀のもので、第三者である中国人が書いたものです。
(竹島・独島の歴史研究をするに当たっての三原則)
(1).真実の歴史を求める。
(2).現在の政治とは無関係であること。
(3).韓国側で書かれた史・資料も丁寧に読むこと。
五.原発問題
◎フィンランドの核廃棄物の処理問題。
・核廃棄物を四十万年後の人類が見つけたらどうなるか、フィンランド語で危険と書いても四十万年後の人類が読めるだろうか。フィンランドで議論されています。
・これは未来の人類に影響を与えるものを、現在の人類が絶対に作ってはならないことを意味します。
(1).処理を出来ない科学は科学でない。
(2).近代国家はそのようなものを作ってはいけない。
(3).このようなものを認める法は法でない。
・広島、長崎、福島を経験した日本人はこのことを世界に発信しなければならないと思います。
六.その他
◎書店に出ている九州王朝などをテーマとする本に「古田がこう言っているが、間違っている」として『古代に真実を求めて』などに書かれた講演録をもとに、古田説批判が書かれていることがあります。『なかった』などは私が直接編集しているのでその内容については責任をもちますが、内容をチェックしていないその他の会報などのものについては、私の講演での話を十分に理解しないで書かれたものもあるので、批判されることに困惑しています。取扱いについては十分に配慮して欲しいと思います。
以上
(質問の時間の内容については省略します。本稿の引用・転載については事前了承を得て下さい。 大下)
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