2007年12月 8日

古田史学会報

77号

日本書紀、
白村江以降に見られる
三十四年遡上り現象
 正木 裕

2古田・安川対談
『東日流外三郡誌』
と「福沢諭吉」
 大下隆司

九州古墳
文化の展開(抄)
 伊東義彰

装飾古墳に
描かれた文様
蕨手文について
 伊東義彰

九章算術の短里
 泥 憲和

6彦島物語IIー外伝I、
多紀理毘売と田心姫
(前編)
 西井健一郎

7 『 彩神 』第十一話
 シャクナゲの里2
 深津栄美

最後の九州年号
「大長」年号
の史料批判
 古賀達也

9書評
遣唐使・井真成の墓誌
 水野孝夫
 事務局便り

 

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書評『遣唐使・井真成の墓誌』藤田友治・編著 水野孝夫 事務局便り


 

『遣唐使・井真成の墓誌』
藤田友治・編著

ミネルバ書房、2009.9.20刊 本体価格二千五百円

奈良市 水野孝夫

 二〇〇四年十月に中国・西安市で「井真成」墓誌が発見され、日本・中国両国で大きな話題となり、墓誌および蓋石の銘文の解読例は新聞を賑わし、二〇〇五年には愛知万博会場を含め、各地で展示された。「井真成」は過去の文献には登場しないが銘文に「国号日本」と示された日本人であり、三十六歳という若さで亡くなり、「尚衣奉御」という官職を贈られたと記され、「魂庶帰於故郷」と結ばれていて、墓誌が故国で広く展示されたことは、故人の魂を慰めることになったであろう。
 「井」という姓は「葛井」(ふじい)からという有力説があり、藤井寺市の人々は特に「里帰り」に熱心に動かれた。「井真成市民研究会」が組織され、シンポジウムが開かれ、遂に十二月には墓誌は藤井寺市で展示されたのである。
 本書は、その二回のシンポジウム記録(講師:東野治之、和田萃、葛継勇、王勇、各氏)と関連論文(著者:原直樹、壱岐一郎、桐原総一、藤田友治、各氏)および資料編を納める。
 編著者・藤田友治氏(本会会員)の論文は末尾に「二〇〇五年八月十八日、泉佐野病院にて脱稿」と記されているが氏は本の完成を見ることなく、八月末に五十八歳という若さで亡くなり、論文は遺稿となった。本は以後、美代子夫人の力で完成されたのである。
藤田氏の論文は、氏の好太王碑研究の経験に基づくのであろうが、基礎から、不明文字の確定に努力されており、手堅い。また残る問題点にも言及されており、藤田友治氏自身の課題とされて、研究を続ける予定だったことを窺わせる。それを残して亡くなられたことは残念なことである。
 本書は、墓誌の学問的研究と、日中友好と、藤井寺市町興しの三兎を追っていながら、その全てに成功している。三兎のひとつにでも関心のある方々に一読をお奨めする。


事務局便り

▼来年二月、古田先生はバルディビアの調査研究旅行に赴かれる。スペイン語通訳として本会事務局次長の大下さんが同行。またとない機会。会員諸氏の参加を熱望しています。
▼一月には恒例の新年講演会をしていただく。こちらも、東日流外三郡誌寛政原本の紹介など、貴重な発表が予定されている。
▼関西例会では研究発表が目白押し。しかも、クオリティーは月ごとに高くなっている。その一端が本号にも掲載されている。古田史学・多元史観により関西例会は日本古代史研究の最先端を走っている。正に平成の松下村塾かのようだ。
▼本紙の発送を郵送からメイル便に変更したが、到着が遅れたり、届かないケースが発生している。本紙は偶数月の初旬の発行だが、届かない場合は事務局まで、御一報をお願いします。
▼児童虐待やイジメによる自殺など、社会は深く病んでいる。これらに対して、学問は無力であってはならない。真の歴史学・思想史学の出番が待たれているのだ。
▼会員の皆様、良いお年をお迎え下さい。koga


 これは会報の公開です。

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