古田武彦著作集
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 『邪馬一国への道標』(角川文庫)

邪馬一国への道標

講談社版 角川文庫版

古田武彦

始めの数字は、目次です。
おわりにのみ下にあります。

【頁】【目 次】


  はじめに

001 序章 邪馬一国研究に憑かれて

   わたしの動機(まえがき)/天然の通路/中国海/新しい探究

009 第1章 縄文の謎の扉を開

009  (01) 縄文人が周王朝に貢献した ーー『論衡』をめぐって

      倭人の周代貢献/従来の少数派/わたしの疑い/中国海を考える/骨太い批判/論衡の自叙伝/先輩と後輩/金印は証言する/伝播の証明/山海経の秘密

031  (02) 殷の箕子は倭人を知っていた ーー『史記』『漢書』をめぐって

      タイム・マシーンを遡る/架空と実在/箕子朝鮮の真実/孔子の証言/班固の真意/”二人ぼっち”の航海/「誤認」の回復/訓読を正す

044  (03) 孔子は倭人を知っていた ーー『論語』『漢書』をめぐって

      孔子と日本列島/孤絶の世界/旧知の人/周代からの伝承/はるかなり、大交流

051 第2章 三国志余話

051  (04) まぼろしの倭国大乱 ーー『三国志』と『後漢書』の間

      「大乱」への疑い/「大乱」を追う/拡大された「大乱」/”臺のインフレ″と共に/何が「往る」のか/いつ卑弥呼は即位したのか/〈資料−「住」〉/謎解きパズル/これが結論です/二人の錯覚/さらに吟味を/ここに本筋が

073  (05) 陳寿とピーナッツ ーー『晋書』陳寿伝の疑惑

      わいろの嫌疑/千斛の米/洛陽へ行く/米の単位/三世紀の潅漑/伝を立てず

084  (06) 陳寿と師の予言 ーー『三国志』と『晋書』の間

      周の予言/不幸に非ず/的中した予言

090  (07) 陳寿の孔明への愛憎 ーー『三国志』諸葛亮伝をめぐって

      孔明伝の嫌疑/真実な迫力/応変の将略/虚名の息子/名誉回復/資料〈晋書陳寿伝〉(全文)

103 第3章 三世紀の盲点

103  (08) それは「島」だった! ーー津軽海峡の論証

      絶妙の珠玉/海中洲島/倭地の奥行き/島の倭人/島の「倭の五王」/重大な南斉書/決定的証言/日出ずる島/いまだ現われず/津軽海峡の出現/光の中の海島/日本の史書/見ざる蝦夷国/蝸牛の争い側/竜飛岬の彼方

118  (09) 疑いなき邪馬一国 ーー『隋書』経籍志をめぐって

      わたしの筋道/探し物の余得/魏臺の発見/倭人伝にも/後宮が焼けた/求めざる朝貢/天下の天下/じいさんの顔

127  (10) 真実への道標 ーー伊都国「統属」論争から

      宝の原野と蜜柑/謎の始発点/迷惑の今昔/伊都国中心読法/もう一つの実例/国と王/燎原の火/分布図/人暦と卑弥呼/道標ここにあり

155 第4章 四〜七世紀の盲点

155  (11) 歴代の倭都は「謎」ではない ーー『翰苑』をめぐって

       「白村江」直前の書/博麻の塔/昼寝の夢/倭都のありか/倭都の隣り/〈資料−翰苑、後叙〉/訓読の正否/新しい鉱脈/湯谷の謎/日出ずる処

187  (12) 四世紀は「謎」ではない ーー『広志』をめぐって

       四世紀の書/邪馬嘉国の謎/傍国を描く/倭王の邦台/広志の成立

203  (13) 平西将軍の謎 ーー『宋書』をめぐって

       新旧の世代/平西将軍の謎/三世紀の読み/「西」の長官

213  (14) 一大率の探究 ーー『宋書』をめぐって

       一大率への疑い/五率の道理

222  (15) 太宰府の素性 ーー『宋書』をめぐって

       最後の珠玉/開府儀同三司/太宰府の論理/九州の論理/三段の論理/わたしの失敗譚

239 第5章 二つの不思議

239  (16) 親魏倭王の印 ーー『宜和 集古 印史』をめぐって

      「金印」の不思議/連続する謎/謎の行く手

248  (17) 東方海上に紫庭あり『宋書』の楽志をめぐって

       紫の庭/滄海を観る

252  (18) 八ケ岳山麓の縄文都市 ーー諏訪の阿久遺跡

       常識を破る二つの根拠/先入観の書き改めへ

259  おわりに

   

259 解説にかえて 《対談》夢は地球をかけめぐる ーー小松左京さんと語る

1〜9人名・事項・地名索引

 

古田武彦
大正十五年一九二六年、福島県に生まれ、広島県に育つ。
旧制広島高校より、東北大学法日本思想史科に進み、昭和二三年卒業。
松本深志高校・神戸森学園・湊川高校・洛陽工業高校の教師生活を経て、昭和四五年退職。
以来、古代史と親鸞の研究に専念。
〔主要著書〕『「邪馬台国」はなかった』『失われた九州王朝』『盗まれた神話』
『邪馬一国の道標』『邪馬一国の証明』『邪馬壹国の論理』『倭人も太平洋を渡った』
『親鸞 ーー人と思想』『親鸞思想 ーーその史料批判』

邪馬一国の道標(やまいちこくのどうひょう)
昭和五十七年六月三十日 初版発行
昭和六十二年四月三十日 再版発行
著 者 古田武彦
発行者 角川春樹
発行所 株式会社 角川書店
印刷所 暁印刷
製本所 大谷製本 
装幀者 杉浦康平


おわりに

 語りたいものを語り終えた ーー1978年5月 講談社版発行


たしは今、その喜びの中にいます。それは果実のように言葉の籠(かご)の中からあふれ(この本の中に盛りこまれたのは、わずかに半分あまりなのですが)、昨年の秋からこの冬まで、わたしは充実した収穫の日々にいました。
 その日々の中で、わたしの目をひきつけた二つの新聞記事があります。
 その一つ。「夏王朝の遺跡発見」という短い記事です(昭和五十三年一月二十九日、朝日・読売新聞)。
 『中国古代の伝説の帝王「禹」の開いた夏王朝(紀元前二十一 ーー 十六世紀)の文化を解明する有力な手掛かりが見つかった』という書き出しで、二十七日の光明日報(中国)の報道を伝えています。ところは河南(かなん)省登封(とうふう)県告成鎮(こくせいちん)付近。あの「禹県うけん」と名づけられた土地からほど遠からぬところ。洛陽(らくよう)の東南です。
 やがて詳報がもたらされることと思いますが、かつて架空説に立つ学界の手によって葬(ほうむ)り去られていた古代王朝はよみがえり、『史記』『漢書』の記事が虚偽でなかったことを実証しつつあるようです。
 しかも、この古代文明の発祥に先立つこと、八千年。すでに“世界最古級の土器文明”が日本列島に誕生していました。こう考えてみると「中国海」をはさむ両者の早くからの交渉、それはむしろ必然の現象だと言えましょう。
 昨年から今年にかけて、わたしがドキドキしながら発見してきたこと、それらはやがて万人の常識となる日が来るでしょう ーーわたしはそれを信じます。
 その二つ。このほうは、一見古代史とは縁がなさそうな記事ですが、東京の衛星都市の一つでの事件。六歳の自閉症児が道に迷って歩き疲れ、くるぶし付近まで水につかった様子で、工場の跡地で凍死していたというのです(昭和五十三年二月五日、朝日新聞)。
 この記事は、なぜかわたしにあの『三国志』の一節を思い起こさせました。東沃沮(よくそ)の海岸に流れつき、“食わずして死んだ”というシャム双生児の運命を。三世紀から二十世紀まで、一条のかすかな線がつづいている。わたしにはそのように感じられたのです。
 荒波に流されゆく不幸な葦舟(あしぶね)。それはわたしの観測基点のすえられている場所です。そこから見える古代日本丸の航跡図を正確にしるしとどめる。それがわたしの願いでした ーー葦舟がきりはなされることのない、未来の日々のために。
 この本を書き終えた今、海の彼方から新しい太陽がのぼってきます。たったひとりの考古学への挑戦。わたしは求めゆくときめきの中で、まぶしく光のあふれる暁を迎えようとしています。

     昭和五十三年四月七日
                著者(古田武彦)


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倭(ヰ)人と蝦(クイ)人(古田史学会報52号)

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